一期一会。−2−

寝室の中まで踏み込んで言い返したところ。

葵は、深い溜息を吐いて、顔を覆っていた
手をどけた。

ふ、と此方を振り返った葵の目は、
何時になく真剣で、熱がこもっていた。

…な、んか、いつもと違う…?

そもそものオーラが、違った。

いつもの葵じゃない。

ニコニコして、優しくて、紳士で。

たまに腹黒いけど、良い人。

…それが、今。

「……悪い子だね、男の部屋に入って来ちゃうなんて」

別人みたいに、思える。

全てが、妖艶で、美麗で。

危うく心臓が鷲掴みにされかける。

私は至って健康体で、熱なんてないのに、
頬が赤くなっていく。

「…こんな時に現れたら。

 理性効かなくて、襲っちゃいそうだよ」

『…え?』

言われたことが理解できなかった。

ー…襲う?

熱で赤らんだ顔とは反対に、その声は酷く
冷静で、それでいて真剣だった。

…え、この人、熱で頭おかしくなった??