聞いて、確信した。

和は、…救われていない。

苦しくて、辛くて、キツイところに
置き去りにされている。

過去に私が兄に置いてけぼりにされた
あのときのように…。

和は、今の場所にいるのが、辛いんだな。

それを理解できて、よかった。

まだ、この人は救えるかもしれない。

こちら側へ、引き寄せられるかもしれない。

和の返答に、私は誰にも見せたことのない
哀しげな表情をして笑った。

まずは私が、心を開かないとね。

『大丈夫だよ、私がいる。

 これからは、もう、一人じゃないよ』

ずっと、誰かから言ってもらいたかった
言葉。

だけど、言ってもらえなかった言葉。

辛かったときに、言ってもらいたかった
けど、まさか、言う側になるとはね。

ー『お兄ちゃぁあん!』

もう、泣いているだけの幼い私ではない。

私も、大きくなったんだなぁ。

和にも、きっと、響くものがあると思った。

…だって、私達は似てるから。

一人じゃないよ、と言った時、
和は目を赤くして俯いてしまった。