僕は、時雨のそういうタラシな部分が特に嫌いだ。

女に慣れすぎて、あっという間に僕の好きな子の心すら揺らしてしまうから。

時雨にとっては、褒めるなんて朝飯前のことなんだろうけど、ほんといい迷惑。

「…っ////」

恐らく赤面状態であろう愛。

時雨は、何気なく手を離して元通りの距離に落ち着いた。

そして、愛から目を離すと、スマホを取り出して、イジり始める。

そのやり取りの一部始終を見ていた周囲は好奇やら嫉妬やらの感情を含みながら、ヒソヒソと会話をしていて。

時雨も愛も其々人気者だから、良くも悪くも噂の種にされる。

また二人のカップル疑惑が囁かれるのかと
考えてたら、次第にイライラしてきて。

時雨へのムカつきが抑えられなかった僕は机の上に置いていた消しゴムを掴む。

そして、愛が照れたように俯いたのを見計らって、思い切り時雨の頭に投げつけた。

カツーン。

「いった!」

消しゴムは時雨の後頭部にクリーンヒットして床に転がる。

スマホを片手に頭を擦る時雨は、痛いと言っておきながらケロッとしていて腹が立つ。

幸い、時雨は僕が当てたことに気付かなかった為、知らないふりをした。