顔を見れなくて、背を向けたまま、言い放つ。

震える手を、必死に握りしめた。

そうしていないと、泣いてしまいそうだった。



…ごめんな、彩羽。



俺から引き離される彩羽のつんざくような叫び声に、胸を押さえて、聞こえないふりをした。



ごめん、ごめんな…彩羽。
 


俺にできる、お前を守れる方法は、これだけなんだよ。



家に帰ってから、両親の当たりはますます強くなった。

「彩羽をどこにやった!?」

何度も殴られたり、蹴られたりしたけど、全部自業自得だ。

だけど、最後まで彩羽がどこにいるかを吐くことはなかった。

絶対、教えるものか。

傷が増えるたび、早く大人になりたいと思った。



ー…大人になって、大切な人を守れる力が欲しいと、そんなことを願った。