ー「まぁ!貴方…その怪我…」

家を出た際に両親に殴られてボロボロの俺と黙って手を引かれる彩羽を、施設の人達は迎え入れてくれた。

心配そうに傷を見てくる姿に、安心できる大人だと察した。

施設の人達は、俺の話を親身になって聞いてくれた。



ー「…貴方は、妹さんといなくてもいいの?」



優しい口調に、思わずグラつきそうになった。

…そんなの、一緒にいたいに決まってる。

これからも、ずっと、彩羽の笑顔を見たい。

だけど、現実は、ソレを許してはくれない。

俺がいなくなったら、誰がアイツラを、両親を止められるー…?

胸を引き裂かれる思いで、首を横に振った。



ー『…いいんだ』


辛くても、迷いはなかった。

地獄にでも、何にでも、堕ちてやるよ。

それで、たった一人の大切な妹を守れるのなら、悪にでもなれる。

守り抜いた嘘で、幼い彩羽を傷つけた。



ー「二度と、近づくな」