ー「…お兄ちゃん?」

幼くとも、不穏な空気を理解したのか眉を下げている彩羽。

無意識に、繋いだ手に力がこもる。

子供の俺に思いつく、彩羽を守る方法は一つしかなかった。



…彩羽を、施設に引き渡すこと。



それが、どれだけ、過酷なことか分かっていた。

正直、唯一の味方を、心を許す家族を裏切るのは良心に憚られた。

だけど、何より。



…離れたく、なかった。



…でも、俺のエゴで、妹が助かるのなら。

…嫌われたって、構わない。

恨んでも、憎んでもいい。



…それでも、どうか、生きていてほしくて。