母に頬を打たれたらしく、真っ赤に腫れ上がった頬を押さえ、一人で泣いていた彩羽。

大声を出すと、また両親に手を出されかねない。

宥めるために抱きしめてやると、直ぐに泣き止んだ。

俺が目を離した隙に、彩羽は身体中を殴られ蹴られていた。

平手打ち一つで済むなら、良い方なくらいで。

いつ命を落としてもおかしくない、苛酷な環境下に、暮らしていた。

ー「お兄ちゃん、遊ぼ」

無邪気に笑う彩羽が、愛しくて、切なかった。

俺といるときの彩羽は、幸せそうだった。

それが、嬉しくて、苦しかった。 

守ってやりたいのに、俺は、あまりにも無力だ。

それに。

彩羽は、ここに居たら…駄目になる。

これ以上、もう、傷ついて、泣いてほしくない。

日に日に、増していく想い。


ー「壮太っ!そいつをどこへ連れて行くつもりだ!」


ー『どこでもいいだろ!!』


両親の手から逃れ、傷だらけのまま、彩羽の手を取り家を出た。