一期一会。−2−

「…っ!」

目を見開いて、息を呑む和に私は意味深長に微笑んだ。

だからさ、私の秘密を教えるね。

そしたら、もう。

拒絶なんて、させないから。

「…え、何してるの?」

ジュースを腕に抱えて戻ってきた頼人は、
私と和の状態を見て不思議そう。

ジュース、ありがとね。

そして、ごめん。

私は、和の頬から手を下ろすと無言で背を向けて駆け出した。

さぁさぁ、鬼ごっこの始まりだ。

「「彩羽!」」

もうすぐ、私の計画は佳境を迎える。

無心で走る私を二人は追いかけてきた。

二人共下駄なのに、本気でごめん。

頼人に至ってはジュース持ちだし。

私は息を切らしながら、夏祭りの中を逃げる。

スルスルとぶつからずに走る私を、人は驚いたように見ていく。

目立つのは御免だけど、多少は諦めるしかない。

“王蝶”の本気は、こんなもんじゃないけど。

鬼ごっこはあくまで前振りだから、別にいっか。