頼人は困ったような照れたような顔をして前を向いている。

えらいなぁ、頼人。(※普通)

「ねぇねぇ、あれみて」

「かわいー」

「カップルかな」

ん?何か、私の周囲が微かにざわめいてる?
 
ヒソヒソ聞こえてくるような…。

…気のせいかな、気のせいだよね。

睡魔のせいで頭が回らない。

5Gが一気に3Gになったみたい…。

式は進み、入学生代表の式辞。

私は、マイクの声を拾って、うっすら
目を開ける。

古立和…見とかないと…。

「えー、次に入学生代表挨拶ですが、
 本日、古立和君にして頂く予定でした」

そう、する予定…“でした”?

過去形がやけに目立って、私は『え?』と
目を覚ます。

古立和じゃないの!?

私何のためにここに来たの!?

「目覚めたの?重いんだけど…」

『ご、ごめん…』

あ、頼人が怒ってる。

そうだよね、迷惑だよね、と頭を起こしたら、頼人にプイッと顔を逸らされた。