かといって、正体を晒したくもないし…。

“王蝶”は、私にとっての守刀だから。

…でも、その願いはフラグ回収によって叶わない。

ビュウっと一陣の風に、フードがかっさらわれた。

バサァと音がして、止める暇もなく、めくられてしまう。

「『あ』」

有功とバッチリ目が合う。

…お、終わった。

シュバッとフードを被り直したものの(コンマ1秒以内)時すでに遅し。

由宇は「ぷっ」と吹き出していて私と有功は向かい合ったまま硬直状態。

…アウトだな、これは。

仕方ない、証拠隠滅するか。

人一人くらい犠牲払ってもいいかな?

「…め、女神…」

『………は?』

有功は、顔を真っ赤にして、その一言を絞り出した。

女神?どこにいるのさ、そんな美人。

幻覚でも見えてんの?

人がいないから焦りはしないけど、…最悪。

また身バレしちまったよ…。

とことんツイてない。

フードを深く深く被って、有功を睨む。

由宇は、「ウケる」と笑って他人事にしてきた。