【短】犬丸、今日が最後だってよ。





バッチリ聞かれた……よね?

だってここには一条くんと私しかいないし、密室だし、広い場所じゃないし…。


かんっぜんにドン引き案件だ。



「ほら、」


「えっ、わっ、」



ふわっと、それまで腰に巻かれていた一条くんの長袖ジャージが私の肩に被せられた。



「これでもさみぃよな…」


「いやっ、十分です…!ありがとう神様っ!!」


「犬丸、こい」


「ぅわぁ…っ!」



おひざ……?

ここは、お膝のなか……?

イケメンのお膝のなかにすっぽり入ってしまった犬丸なのですが……。



「…あっためるだけ。とくに変な気を起こしたとかじゃねーから」


「えっ、あっ、もちっ、もちろんです…!」


「…だから敬語やめろって」


「うっ、ういっ」



背中から回った腕。

ひとつひとつ大げさに反応する私を笑う、数センチしか距離のない吐息。