「あー、一人っ子。そんな感じした」
「えっ、ほんと?一条くんは兄弟とかは?」
「兄貴がひとり」
「いいな~!!犬丸はずっとお兄ちゃん欲しかったんだあ」
スマートフォンなんてないよ。
着替えは更衣室、スクールバッグは教室に起きっぱ。
今日が部活おやすみの日で良かったね。
だってもし部活がある日だったら、こうして一条くんとお話できてなかったし。
できてたとしても色んな音に邪魔されてしまってた。
「何歳はなれてるの?」
「4歳」
「じゃあお兄さんは21歳だね!大学生?顔は似てるのかなっ」
「…兄貴の話はもう終わり。俺は犬丸のこと知りたい」
「あっ、うん、えっと…、犬丸は一人っ子だよ!」
「さっき聞いた。ループするからやめろ」
マットに並んで座る放課後。
時間すら分からないままに、たまに腕や肩がぶつかる。



