【短】犬丸、今日が最後だってよ。





ぴたりと、静まった。


魔法でも使いましたか、一条くん。

外から聞こえていたカラスの鳴き声すら消えちゃった。



「う、うん」


「ほんとに?」


「えっ、…うん、」



もしかして喧嘩、とか……?

血、とか?


それを言われたら犬丸は泣いてしまうかもしれないけど、それが一条くんの好きなものなんだと理解しようと努力はする。



「…犬丸」


「はいっ!どうぞっ」


「だから、犬丸」


「聞きます犬丸っ!!」


「あー、ハマってんなこれ」



背筋をぴんと伸ばして敬礼のポーズ。

諦めたように息を吐いた一条くんは「……牛タン」と、一言。



「犬丸、おまえ選択式のときはぜんぶ当てずっぽうだろ」


「なにっ!?バレてた…!?」


「たぶん小学生のとき鉛筆に番号ふって転がすタイプ。そのときと変わってねーってことだな」


「へへ、照れる」


「よしよし、褒めてねーんだわ」



一条くん、一条くん。

私たちね、そういえば閉じ込められてるんだって。

クラスメイトたちのおふざけにまんまと引っかかってたこと、いま思い出したね。