文句を言って去っていく大人たちは結局、両親の遺産狙いだった。
それは私がもう少し成長してから気づくこと。
そんな汚さを見せないように、兄は見えなくなるまで私を抱きしめるように守ってくれたことも。
『やば。どこに何があんのかまったく不明…。ここって俺の実家だよね?』
『……お皿、そこ』
『ん、さんきゅ。おまえのお茶碗これ?このウサギさんでいーの?』
『…うん』
『あ、待ってこれ昔から使ってたやつじゃん。…覚えてるよ兄ちゃんも』
空手の試合帰り、まさか土砂崩れが起きるなんて思ってもみなかった。
そこは県境の山道。
予定より遅くなってしまった、帰り道。
小学生の部で関東大会まで進んだ私は、賞は取れなかったものの両親は嬉しそうだった。
そんなとき、運悪く起こった土砂災害。
生き残ったのは────……助手席に座っていた私ひとりだけだった。



