このキョーダイ、じつはワケありでして。





施設だって変わらない。

そこに家族がいないなら同じだ。
そこに兄がいないなら、ひとりぼっちだ。



『成海くん!あなたが離せば慶音ちゃんも諦めるだろうから、なんとか説得してちょうだい!』


『もう時間がないぞ!こっちだっていろいろ忙しいんだよ!!』


『帰ってくれて構わないよ。俺たちはあんたらに金を貰おうと思ってないし、渡つすもりもないから』


『な、なにを…』


『それくらい俺たちにはもう……俺たちしかいないんだよ』



もしこの手を離してしまえば、ずっと住んでいた家を手放すことになる。

実質上このまま生き別れることになって、未来はどうなるか分からない。


2度と会えなくなる可能性のほうが高い。


お互いに想像して怖くなったんだ、このときの兄と私は。



『慶音。俺もいろいろ分かんないことだらけだから、おまえが望むとおりにしてやれないかもだけど…、それでも兄ちゃんと暮らしたい?』


『うん…!』


『…だってさ。こいつの気持ちがいちばんでしょ』