そうだ…。
1度入った学校をやめるなんて簡単なことじゃない。
一時の感情で決めてしまうには、計画性がなくて突発的すぎる。
「でもほら、私が学校やめて働けば…、兄ちゃんも少しはラクできるだろうし」
「…俺がおまえにそんなことさせると思う?今の生活が苦しいわけでもないから。いいんだって、慶音は何も心配しなくて」
前もこんなことを考えた。
お父さんとお母さんが死んでから、兄の生きる理由は私になった。
それまでは自分の人生を好きなように生きていたらしい兄だけど、じゃあ今は…?
兄ちゃんはいま、自分のために生きることができてる……?
「兄ちゃんは慶音が笑って伸び伸び生きて、すくすく立派に育ってくれるだけで十分」
「だって兄ちゃんにも兄ちゃんの人生があるのに…、私のために生きてるじゃん」
「んなことない。…たぶん、いやきっと、俺がいちばんわがままだろ」
わがまま…。
もし、あのときも兄のわがままだったというのなら。



