「そのままこっち来い、ポチの助」
「…それどこかの犬。わたし慶の助」
「ふっ、慶の助ね。似合う似合う」
白状しない妹に見兼ねたのか、とうとう兄は料理を中断させてソファーへ移動。
「やめたいって言われてもなー…。せめて高校までは出すって天国の母さんと父さんに約束しちゃったし、俺はおまえを大学まで行かせる気満々だったし」
「…やめる」
「もう決定なの?」
大学……。
まさかそこまで考えてくれていたなんて。
自分は中退してまで就職することを選んでくれたのに、どうしてそこまで。
「じゃあせめて、転校とか…」
「…転校、ねえ。今からだといろいろ手続きとか面倒だって。いまの学校はここから交通も便利だから、俺も安心してたんだよ」
咲良ちゃんとも同じだし、と。
「空手も。空手部ってわりと珍しいんだよ慶ちゃん。それこそおまえが辞めたら部員や先生たちも困るんじゃない?」
「…かもしれないけど、」
「せっかく天瀬くんっていう友達もできたのに?」



