「気安く名前呼んでくんな。兄貴面もうざいんだけど。…他人のくせに」
「こら真幌…!!どうしてそんな言い方しかできないのよ!」
ケーキは皿の上で形を崩した。
気にせず淡々と夕飯だけをおぼんに乗せてリビングを出る寸前、義弟はピタリと止まる。
俺に何か言いたいことでもあるのか、それとも忠告のようなものをするつもりなのか、表すならそんな空気で。
「…あいつをおまえの面倒なお遊びなんかに付き合わせんなよ」
“あいつ”
言われて浮かんだ顔は、ひとりだけ。
「おまえなら他の女、たくさん居るだろ」
いないよ。
俺のボディーガードが務まる女の子なんか慶音しかいない。
てか、なんで関係ないおまえにそこまで言われなきゃなんないわけ。
俺たちは他人なんだろ?
反論という反論がここまで浮かんでしまった俺は、きっとどこかおかしい。
「────四宮を泣かせたら許さないから」
このとき初めて、俺は義弟の天瀬 真幌と正々堂々お互いに目を合わせたように思う。
*



