母親に認めてもらいたいんだ。
ただ母親の目に映りたいだけなんだ。
わざわざ俺と同じ高校を選んでまで、チャラチャラ生きている俺とは正反対な自分をあえて見せたかったんだよ。
小さな頃からずっと続けているらしい空手だって、どんどん成果を残して、それはやっぱり母親に褒めてもらうために。
「あら、今日は早かったのね」
「おかえり。…真幌」
「…………」
せめて挨拶だけでもと、俺は家族になった当初からずっと続けていた。
もちろん同じように返されたことなんか1度もないけど、今日はそこに加えて名前も呼んでみる。
わかってたけど案の定、スルー。
「これね、志摩くんが真幌にあげてって。ほんとうに優しくて素敵な子ね~」
「……いらね」
「ちょっと真幌…!またそんな言い方して!!」
「いいよおばさん。…たぶん部活で疲れてんだよね、ごめん真幌」
俺はおまえと仲良くしたいだけなんだよ。
そのための“きっかけ”を不器用なりに作りたかっただけなんだ。



