でもさ慶音。
おまえのところも、なんとなくだけど俺たちと似てる気がしたんだよ。
「おばさん、真幌はまだ帰ってこないんですか?」
「そうなの。夏の大会がもうすぐだから、部活が忙しいんですって」
「…じゃあ俺のこれ、あいつにあげてください」
「ええ?それは志摩くんにだけ特別に用意したケーキよ?」
俺にだけ用意される特別なもの。
義母となった人がよくする行動だった。
きっと真幌はそんな俺のことを、自分から母親を奪った泥棒とでも思っているんだろう。
家族になって2年目の今も、いまだに家族にも義兄弟にもなってくれない。
その証拠に苗字だってお互いがそれぞれ。
母親が“緒方”に変えても、実息子のあいつは旧姓である“天瀬”をずっと名乗っていた。
「ううん、俺だけ特別扱いとかはしなくていいので。真幌にも…いや、できれば真幌を優先してやって欲しいんです」
「でも真幌ったら志摩くんに冷たい態度ばっかり取って…、ほんと困った子だわ」
「ちがいます。あいつは……本当はやさしい奴だと思うから」



