このキョーダイ、じつはワケありでして。





今まで女を泣かせることなんか、特別でもなんでもなかった。

そもそも勝手に泣き出すような女ばっかり相手にしてたから、涙を武器にして使われることのほうが多くてさ。


なのに、あの顔はダメだよなって、よく分からないけど本能につつかれた感覚。



「志摩くんだいじょうぶー?あたしが手当てしてあげる~」


「いーから。ほっといて」


「もー、どうしてそんなに怒ってるの?」



怒ってる…?うそでしょ俺が…?


殴られたから?
泣きそうな顔、されたから?

それとも慶音を泣かせてしまいそうになった自分に対して…?


わかんない。

ほんっとーに、わかんないよ。



「……まほろ、…真幌、まほろ」


「志摩くん…?マホロって誰?」


「…なまえ、いっぱい呼んであげるといいんだって」


「は?」



なんであんな相談したんだろ、俺。

目の前で仲良さそうなキョーダイを見ちゃったから、俺たちも同じようになれるんじゃないかって?


はは、すっごい嫌われてんのにね俺。