さらっと触れた柔らかい黒髪は、天瀬 真幌のもの。
覗きこむように見つめてくるクラスメイトの表情はどこか心配そうだった。
「なにか、された?」
「え…、」
「…四宮、泣きそうな顔。あいつに何かされたんじゃないの?」
思わず唇をゴシゴシと何度も腕で拭うと、余計に何かあるんじゃないかと覗きこまれる。
天瀬も似たようなこと言ってくるし、どんな顔を見せたらいいか分かんないし。
にいちゃん、兄ちゃん、なるみにいちゃん。
私たち、ぜんぜん似てないんだって。
「……がっこ、やめたい」
「…は?」
「そしたら兄ちゃん…怒るかな」
「……それは俺には分からないけど、俺は四宮にやめてほしくないよ」
拝啓、兄ちゃん。
いいや、敬愛なるお兄様へ。
もし妹が転校したいと申し出たら……お怒りになりますでしょうか。
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