「なにがそんなに悲しかったのよ」
かなしい……?
私、怒ってるんじゃなくて悲しんでるの……?
ああそうだ。
あの日、保健室で兄ちゃんと似てないって言われたことを今になっても根に持っている。
それほど悲しかったんだ、あの言葉は。
「…悪かったって。まさかそんな本気で怒らせるとは思ってなかった。…ごめんやり過ぎた」
「っ、」
いまだにこぶしを握りつづける私の利き手を掴んで、これ以上は手を加えさせないようにと止めてくる。
「そんな泣きそうな顔、しないでよ」
だったらあんなこと、言わないでよ。
私以上にあのとき、あの瞬間、悲しんでたのは紛れもなく兄ちゃんだった。
「ちょっと可愛いと思っちゃったんだって。俺のために本気で相談乗ってくれてさ。だから…キスした」
あんな質問を私にしてくるあたりがもう、終わってる。
わざと馬鹿にしてるのかって腹が立った。



