このキョーダイ、じつはワケありでして。





体力、すごく使った。

たった1擊で息切れしてたら、こいつを反省させることなんかできないよ私。


どこからでもかかって来い。


構える私を他所に、殴られた自分の顔に手を当てて顔を歪めるクズ男。



「うっわ…、唇切れてるわこれ」



もっとボコボコにするつもりだった。

あの衝撃で唇が切れた程度だったことに、少なからずショックだ。


怒ったならそれはそれでいいし、なにか反撃してこようものなら喜んで返り討ちにしてやる。


そんな意味を込めて構えを作っていれば、緒方 志摩はふっと笑うように息を吐いた。



「ちょっとからかいすぎたか。わかったから、俺を敵にはしないでって」


「…敵、ですよ」


「じゃあハグでもしとく?仲直りしよう慶音」



ふざけるな。
死んでもそんなこと、しない。

もともと大嫌いだった。


けど、もっと大嫌いになった。