本当はお母さんもお父さんもいて、その上で兄妹仲良くできることがいちばんいいはずだったんだろうけれど。

大切にできなかった時間というものは、悔しいことに失ってから気づくものだ。



「きっかけ……か」


「うちも不仲ではないですけど、すれ違ってた時期はあったんで」


「え、あのお兄さんと?ぜんぜん想像できないわー。あんなにお兄ちゃんラブなのに?」


「…うるさい」



まだ私が子供だったから良かったのかもしれない。

11歳、周りからは物静かだと言われながらも一応は自分の気持ちを言うことができた歳だった。


もし今の年齢で同じことが起こっていたなら、それはそれで兄とはまた違う溝が生まれていたと思う。


なんて考えると、人生というものは本当にタイミングがすべてなんだなって。



「そっちはけっこう歳、離れてるんだっけ?」


「8歳です」


「あー、わりと離れてるね。そーいうのってさ、離れすぎててもあれだし……近すぎても難しいもんだよね」