当時のグレていた兄にとって喧嘩なんてものは、日常茶飯事の朝飯前くらいのものだった。

まだ小学生だった私が夜中、のどが渇いてリビングへ向かうと高確率で玄関にはボロボロな姿の兄らしき男が制服姿で寝ていて。


見つけるたびに嬉しくなって駆け寄っていたっけ。



「兄ちゃん、そのあとの部活参観も行くからね。てかまじで時間ないって慶音。幼なじみの前ですごい醜態見せつづけてんの分かってる?」


「…いきたくない」


「それは知らん。でもおまえが動かないことで咲良ちゃんも連帯責任になるんだよ」


「………いってくる」


「よしよし。おりこーさん」



兄ちゃんは知らないだろうけど、その頃のあなたにこっそりブランケットを毎回かけてあげていたのは私だ。


兄も昔から私と同じように習っていた空手。
ううん、私が真似をして始めたんだ。

それは私たち兄妹が兄妹である、紛れもない証拠。