「慶音ちゃん、なにか…あったんですかね…?」


「まあ…なにかは、あったんだろうね。何もなくてこんなことやってたらもっと心配」



もちろん朝と放課後は部活があるから空手に集中するため、活動時間は主に休み時間と昼休み。


鬼の形相をした女たちの制裁から守って、守って、守って。

ときにはごっつい男からも守って守っての繰り返し。


そうこうしていたら、気づけば6月だと。



「慶ちゃん、いよいよ明日だよ」


「…あした…?」


「授業参観」


「……あ。」



大好きな兄からの慶ちゃん呼びに、憂鬱な気分は半分だけ晴れた。



「楽しみだなー。学校なんて何年ぶりだろ。ほら俺って高校のときはちゃらんぽらんだったから」


「…たまに帰ってきたとき、玄関に血だらけで倒れてたよね兄ちゃん」


「……あったっけね。そんなことも」



爽やかな朝には似合わない兄妹の昔話を聞いて、顔を引きつらせた幼なじみ。