「ほらねえ。こうやって男から抱きしめられんの、かなり慣れてる」



………なにその誤解を生みまくる言葉。

断じて私は常日頃からいろんな男に抱きしめられているとか、そんなんじゃない。



「もしかして毎日のように抱きしめてもらってたり?」


「…………」


「それとも自分から抱きついてたり?うんうん、見たかぎりそっちな気がするなあ」


「…………」



控えめに言っても言わなくてもめんどくさい人間というのは本当に存在するものなんだと。


そもそも私を抱きしめてくれるのも、私が抱きつくのも、兄ちゃんだ。

大好きな兄ちゃんだけだ。


それを知らないから適当なことばっか言え────



「お兄ちゃんっ子なんだねえ、慶音って」


「っ!?!?」



ドクドクドクと、急激にビートを刻みだす心臓。

大丈夫、落ち着いて平常心。
ピンチのときこそ笑顔。