はい、使った。
持ってる武器はとりあえず使っておこう戦法だ、ここまで来たら。
「料理、毎日してるでしょ」
「あ……」
この手は炊事洗濯を毎日行っている手だ。
マニキュアもつけていない、爪も伸びてない、少しだけ荒れている、そんな手。
そっと重ねるように掴むと、戸惑う彼女の瞳が揺れた。
「こんな女…、普通はみんな嫌だと思います」
「残念。普通じゃないんだ俺って」
「そうやってからかうの……ダメ、っ、」
そのあと続けようとしたんだろうけど、俺と目を合わせて止まった。
自然とタメ口に変わった感じがして、俺は無理やりにも彼女をカウンターから出した。
これがからかってるって?
冗談言うなよ。
「俺のとこ、くる?」
「…え……」
俺はね、どうしても手放したくない女の子にはこんな伝え方しかできない男らしいんだ。



