「いつもああやって言ってくるの?」
苦笑いのつもりなんだろうけど、泣きそうな顔にしか見えない。
それはたぶん、沙織さんの癖なんだろう。
「もう30近いですし…、売れ残っているのは事実ですから。仕方ないです」
きっと今までも恋愛というものが身近になかったパターンの人なんだと思う。
メイクもナチュラルというよりは、不慣れ。
でもそれすらも俺からすれば惹かれる部分でしかないし、沙織さんが思っているより沙織さんは魅力的な女性だ。
「いいんです。このクリーニング屋を継続させることが、今の私の目標ですから」
こんなこと言われて、好きにならないほうがおかしい。
それが片親を持つ彼女の本心なのかは分からないけれど、娘にこんなことを言われて喜ばない親はぜったいに居ないよ。
「俺、沙織さんのお母さんに娘をどうぞよろしくって言われてる。俺たちがよく話してるの見てたらしいし、付き合ってると思ってんじゃないかな」
「え…、えっ!?ご、ごめんなさい…!母ったらまた勝手にそんなことを…」
「お任せくださいって言っておいた」



