カウンター、おっさんの背後。
俺の姿を目にして泣きそうな顔をした彼女。
「ここはキャバクラじゃないんだよ」
「んあァ?なんだァ?ずいぶんと若い兄ちゃんだな」
「し、四宮さん…」
だからさ。
そーいう顔、ダメだよ沙織さん。
俺が来てホッとしたような、ずっと俺に助けを求めていたんじゃないかって思わせてくれる顔。
そんな顔されたら自惚れても仕方ないだろ。
「沙織さんはあんたごときが釣れるような女じゃないから」
「いやいやオレはただな、洋子ちゃんのことを思って…」
「本人が言えないから代弁して言わせてもらうけど。迷惑だって言ってんだよ」
退けよ───、
視線だけで伝えると、男は転びそうになりながらも店から撤退していった。
「ごめん。常連ひとり減らしちゃったかも」
「いえ…。ごめんなさい、お見苦しいところを見せてしまって…」
見苦しくなんかない。
むしろ誘いに乗るようなあなたじゃなくて良かったと思っている。



