朝には存在していなかった湿布が左の頬っぺたに貼られていた。
ぺりっと剥がしてまでも腫れた様子を見せてくる厚かましさ。
「…いろんな女の子に手を出してるからじゃないですか。自業自得ですよ」
「まあまあそんな言わないであげてって。つまり、朝のキミの勇敢な姿に俺は惚れちゃったわけ」
「…………」
惚れた、なんて。
こんなにも軽々しく言えてしまうところはもう才能なんだと思った。
としても私には心底どうでもいいことで、こんなチャラチャラした男に惚れられたところで嬉しくもない。
こいつからすれば挨拶みたいなものだろうし。
「だから私にそいつらから守ってほしいってことですか」
「ピンポーン」
「勘弁してください。じゃ、お疲れさまでした」
「まってまって、まだ話は終わってなーい。むしろ始まったばかりー」
とうとうぐいっと掴まれた腕。
空手じゃなく絞め技や固め技を得意とする柔道か少林寺拳法を習っておくべきだったか…と本気で考えてしまったくらい、ウザすぎる。



