もしかして俺って、あのおっさんと同じだと思われてんのかな。
「いい店があってさ。な?行こうよ沙織ちゃん」
「ごめんなさい。今日は予約がたくさん入っていますので…」
「いつもそう言うじゃねェか!そんなんだから売れ残るんだよ」
「……すみません」
聞き捨てならないセリフに、俺は無意識にもゆっくり近寄る。
ここは母子ふたりで経営している、町の小さなクリーニング屋さん。
俺より年上だろう彼女は、このお店の顔でもあった。
ただ目立つ見た目じゃないし、お店自体も周りの建物に埋もれてしまいそうだけど。
店前の花壇だとか、綺麗にされている店内だとか、そういうところの気配りが俺の目には魅力的に映ったのだ。
「あーあー、これじゃあ結婚は無理だな。洋子(ようこ)ちゃんも泣くぜきっと」
「…母のことは私が支えますので」
「そうじゃなくてさ。孫の顔を見せたいとか思わねェのか」
なんだよそれ。
お節介、余計なお世話なんだよ。
あとそれ、普通にセクハラだから。
沙織さんがどんな人生を歩こうが、赤の他人のあんたに説教されることじゃない。



