「慶音、ありがとう」


「…なにがです───わっ、ちょっと、」



電車から降りた緒方(弟)を咲良が追いかけて、続こうとした私の手をぐいっと引いた彼は。

そのままスムーズに繋いでくる。


嫌がらせは、なくなった。


私が気にしなかっただけじゃなく、女遊びをやめた先輩は害悪そうな女子生徒に自ら出向いてまで端から端まで対処したのだ。



「いつかの未来でお兄さんと一緒に酒飲むのは俺の予定だからね」


「え?」


「お兄さんがおまえ以上にシスコンになる理由、今ならすっごい分かる」



ほんと可愛すぎてたまんないよ───、


そう言って緒方(兄)である緒方 志摩が嬉しそうに見つめたのは。

私の短く切り揃えられた髪と、リュックにさりげなくぶら下がっている……、


ナマコのストラップ。