今日も賑やかな朝だ。

4人で駅へと向かって、電車に乗る。



「てか、なんで兄貴もいんの。おまえ部活ないだろ」


「気分だよ気分。今日は兄ちゃん、はやく起きれちゃったんだ~」


「…兄ちゃんとかやめろ。おまえはどう頑張ったところで成海さんみたいにはなれないから」


「なれないんじゃなく、なるんでーす」


「……うぜえ」



こんな小競り合いが咲良も好きらしい。

1歳年上の彼のことを“兄貴”と呼ぶようになった天瀬は、じつは天瀬ではなくなった。


緒方 真幌(おがた まほろ)───。


案の定クラスメイトどころか、全学年の生徒たちが腰を抜かすほどの驚きがしばらく校内に響き渡った。

生徒たちの間では“イケメン義兄弟”、なんて愛称で呼ばれているらしいのだけど。


私はまだ癖が抜けなくて、しょっちゅう天瀬と呼んでしまう。