「手先が器用なテクニシャンって言えば、きっと沙織さんもイチコロだよ」



兄、フリーズ。



「………そんな言葉どこで覚えた?」


「テツ」


「あいつ……」



今では料理も基本は何だとしても作れてしまう兄だし、私と違って器用なところがある。

なのでテツの言っていることは間違ってない……はず、だけど。


どういうわけか兄ちゃんは私の頬っぺたをつねってきた。



「うひっ」


「忘れなさい。いい?わかった?いまの言葉はスッキリ忘れるんだよ慶ちゃん」


「……ひゃい」


「おまえにはまだ20年は早いから」


「あははっ。お兄さん、それはさすがに長すぎません?」



俺って地獄耳だから聞こえちゃった~と、呑気に混ざってきたのは先輩。



「…文句あるのかい緒方くん。ちなみに妹はあげないよ?」


「心配しないでお兄さん。慶音には俺がちゃーんと実践で教えますから」


「…あ”?」


「じょ、冗談ですって今は。こっわ……。そんなこんなで今日も慶音の安全は俺たち緒方兄弟にお任せください」