「じゃあみんな、今日も気をつけて仲良く元気に行ってらっ───…そうだった」
隠すことなく両手を広げて待っている妹を前に、兄はくすっと笑って包み込むように抱きしめてくれる。
天瀬の前ではクールな四宮 慶音を。
そう着飾っていた私など、今はもう存在しない。
「兄ちゃん、今日も私は兄ちゃんの家族だよ。事故にも気をつけてちゃんと帰ってくるから安心して」
そんな私たちを見守る3人の友達の眼差しは、みんな揃って柔らかいものだ。
「そっちの四宮のほうが俺は好き」と、天瀬に言われた数日前のこと。
「…ありがとう慶音。俺もずっとおまえの家族」
「兄ちゃん。ここに、いつか沙織さんも混ざるんだよ」
こうして学校へ行く朝は、兄ちゃんだけじゃなく沙織さんにも抱きしめてもらって。
最終的には3人でぎゅっとする未来を想像したら、想像だけで幸せすぎた。
ちょいちょいと、耳を手招き。



