「俺が中学のとき使ってたやつ」


「私に、くれるの…?」


「だっておまえ新しいの買えって言っても買わないし。たぶんサイズはまたちょっとでかいかもだけど」



兄はくすぐったそうに笑った。


まるで、それなら着るだろ?と。

私のことを分かりきっているように譲り渡された新たな宝物。



「おはよう慶音ちゃん!成海さんもおはようございますっ」


「おはよう咲良ちゃん。───と、緒方兄弟」



朝、当たり前のように迎えにくる顔ぶれがいっきに増えた。

おはようございますと礼儀正しく返す天瀬と、朝からヒラヒラ手を振って私に笑いかける先輩。


天瀬はもう、彼が近くにいたとしても鬱陶しそうにはしていなかった。



「あれ?なんか今日の慶音、いつもより機嫌よさそう」


「あ、わかる?俺の胴着あげたんだよね」



聞いてすぐ、表情を変えたのは天瀬。



「え。マジですか、レアじゃないですか。四宮、あとで見して」


「うん」



はやく部活に行きたい。

できれば夜もずっと着て寝て、そのまま登校したいくらいだ。