彼女はまだそいつの生態とやらを完全に理解していないんだ。


本命、固定、彼女。

なんてものを絶対に作らない、それが2年A組のプレイボーイ。


かわいいね、だいすき。
キミがいちばんだよ───、


そんなものは奴の営業トークのような常套句(じょうとうく)に過ぎないということを。



「なんとか言いなさいよ志摩…っ!!」


「まずキミの名前なんだったっけ?リコ?それともカナデ?」


「なっ…!!」



くすくすと、人気者を囲う女子生徒は笑い出す。


いちいち全員の名前を覚えるような真っ当な付き合いではない。

つまりそれが答えのようなものだ。


可哀想なことに、その他校の女子生徒はただそいつの笑顔に踊らされてしまった憐れな女の子というわけ。



「ごめんね?かわいい子の名前は覚えられるんだけどねえ、俺」


「なっ、なによそれ…っ!あたしがブスだって言いたいの!?」


「んー、そこまでは言ってないけどさ」