たまごサンドを頬張って、簡易的に作られたサラダも急ぎぎみに押し込む。
こんなときは緑茶を用意してくれるズレた兄の朝食は今日も健在だ。
これがないと私の1日は始まらない。
「ほら、これ」
無事に支度が終わって仏壇の前に座っていると、兄はどこから取り出してきたのか不明な白い胴着を差し出してきた。
「今日から使いな」
「え…、新しいの買ったの…?あれは初めて兄ちゃんに買ってもらった宝物だから、これ返品してきていいよ」
「よく見て、名前のとこ」
渡された胴着と帯。
見た感じ新品かと思ったが、手にしてみれば使い古さないとできない独特なシワと重量感があった。
「しの、みや……なるみ、」
「前にクローゼットからアルバム出したときにね、ちょうど見つけて。沙織さんにクリーニングしてもらったからわりと綺麗だと思うよ」
刺繍で縫い込まれているのは、紛れもなく兄の名前。
“四宮 成海”
たった4文字を見ているだけでどうしてこうも全身から湧き上がってくるんだろう嬉しさが。



