「今日…、」
「今日?」
「今日、…天気、いいね」
「あー。たしかに」
こんなうまい具合に話せなくなるのか。
咲良、来てほしいけど来てほしくない。
天瀬ってどんな話が好きなんだろう…。
高校生とは、気づかぬうちにすべてのものが変化しているものだ。
そんな淡いスタートを切りそうだった私の高校生活に終わりが突如訪れたのは────その日の放課後のことである。
「どーも。シノミヤ ケイトちゃん」
部活がない日。
それは大好きな兄と一緒に夕飯を作ることができる大切な日。
今日はなにを作るんだろうと期待いっぱいで緩みそうな頬を引き締めていた、下駄箱にて。
どこか見覚えのある男は、私の通り道を塞ぐように声をかけてきた。
「…朝のことは感謝してます。おかげで助かりました」
「いーえ」
「……じゃあ、急いでるんで」
どけ。
いいからさっさと退いてくれ邪魔だ。
言わない優しさってやつを察してほしい。



