「なんとなく、だよ」
咲良が言っていた“シマセンパイ”のウワサに私が興味すら示さなかったのはきっと、私は私で興味ある存在が他にいるから。
人気者な先輩なんか見向きもしないくらい、それはもう夢中な存在ってやつが。
「ふっ、なんとなく?」
「…うん。なんとなく」
この男も女子から人気のはずが、ひけらかさないどころか本人は気づいてもいないと思わせるくらい無頓着。
天瀬がこの高校を受けたからだよ。
私はいつ言えるんだろう、この本音を。
「そ、そういう天瀬は…?」
「……家が近かったから」
ふたりで戻った教室までの廊下が、もっと長くなればいいのに。
質問したいこと、聞きたいこと、たくさんあったのにいざ話すとなると1コも出ないポンコツ。
兄ちゃんこれってどうして?



