「夏の大会、お互いどこまで行けると思う?」
「…ベスト8には入りたいな」
「じゃあ俺と勝負。できれば5位までには入りたいから、俺も」
天瀬は私が中学3年生のときに隣町から転校してきた。
当時の空手部の盛り上がりようといったら、今でも鮮明に覚えている。
「すごいのが来た」と四方八方からウワサされ、当時の男子空手部の主将の座を簡単に奪ってしまった人物が天瀬でもあった。
もちろん恨みも買うはずだが本人は何ひとつ気にもしないタチからか、敵も自然に消えていくタイプ。
「四宮」
不思議だ。
すとんっと、この男に呼ばれる名前は兄ちゃんの次に心地よく落ちてくる。
「なんでこの高校受けたの?おまえなら推薦で有名なとこ、行けただろ」
それは私があなたにずっと聞きたかったことだというのに、どうして私が逆に質問されるんだ。
天瀬 真幌は、どこか私と似ている。



