「えっ、慶音ちゃん知らない…?すっごく有名な2年A組の先輩だよ…?」
「……まったく知らない」
「うちの女子生徒はみんな好きになるってウワサでね…!」
「へー」
もしかしてクラスメイトたちがいつもキャーキャー噂してるひと…?
すごいチャラくて遊び人でプレイボーイ、モテ王子、なんて言われてるらしいけど。
私は空手一筋に生きてきたような人間だから、そういったものにはとてつもなく興味がない。
対する咲良は、有名な“シマセンパイ”に助けてもらったことがそんなにも嬉しかったのか、珍しく興奮ぎみだった。
としても結局、部活には遅刻して部長から注意を受けた私たち。
「めずらしいね」
「…天瀬(あませ)」
朝練が終わった更衣室からの帰り道にて。
咲良は職員室に用事があるからと先に戻ってしまい、かけられた声につい足取りはブレーキ。



