『おれと慶音は血が繋がってないから、ほんとうの兄妹じゃないんだよね…?』
妹ができて約1年。
12歳の俺は、母親に1度だけ聞いたことがあった。
慶音は出会った頃はまだ物心がついていなかったから、きっとおれのことを本当の兄だと思っている。
だけどおれは、そうじゃないって知っている。
母がそのときどんな顔をしていたかは思い出せないが、そっと頬を撫でてくれた優しさだけは胸にずっと残っていた。
『じゃあ成海にとって血が繋がっていない兄妹は、“偽物の兄妹”になっちゃうの?』
ううん、そうじゃない。
そうは思っていたけれど、どんな言葉を使えばいいのか分からなかったから。
このとき俺は口をつぐんで視線を落として、なにも言えなかった。



