このキョーダイ、じつはワケありでして。





「それは許されるのかっ!!高校生だからって犯罪にはならんのか……!!」



この世の中がおかしいんだ、社会がどうかしてるんだ───、


男は根深い宗教信者のように、何度も何度も繰り返しては駅のホームで叫び出す。


あたまがおかしい。

こいつはもうだめだ。
話がまったく通じない。



「…いいよね、兄ちゃん」



おまえの空手は守るためにあるんだよ───兄の言葉を裏切ることになったとしても。

思わずぐっとこぶしを握って、蹴りでもパンチでも打撃を食らわすつもりだった。



「こらこら、それはギリギリ正当防衛にはならないよ。逆に不利になる」


「っ…!」



耳元、誰かがこそっと伝えてくる。



「おっさん、さすがに見苦しいってそれは。ウソにウソ重ねてどーすんの。それってたしか余計に罪が重くなるんじゃなかった?」



公に響いた大きめの声に、ピタリと私の動きと騒いでいた男は息を飲むように静まる。

それは私の背中に立つ存在からで、何よりいつの間に背後をとられていたんだと。