たとえばサッカー部はドリブル、野球部はピッチング。

バレー部はアタック、柔道部は組み手、テニス部や卓球部も球を使った特技。


それぞれの見せ所を保護者や生徒、一般客の前で披露するというものだった。



「天瀬も形なので、私と一緒にやると思います」


「あ、そなの?男女別じゃないんだ」


「空手部は組み手のほうも披露するらしくて、まあ時間の省略です」



2年生と3年生が組み手、私たち1年は形に抜擢された。

じつは組み手よりも見た目重視の形のほうが難しいという裏話は秘密だ。



「…なら俺は余計に見ておかないとね。動画もいっぱい撮るよ」



……やっぱり。
きっと先輩と天瀬のあいだには何かがある。

他人が簡単には踏み込んではいけない、なにかが。



「動画はやめてください。天瀬にも怒られますよ」


「うん、撮りまーす」


「…………」



ある意味、空手部の先輩たちを差し置いてしまった私と天瀬。

やるからには選ばれなかった先輩たちの気持ちも背負って精いっぱいやろうと、約束していた。