図々しくて上から目線。
そんなの私がいちばん分かっているよ。

どちらにせよこの男は私からの誘いにわざわざ応える暇なんかないくらい、女の子たちが予約制で待っている。


すぐに取り消そうとした私なのだけど、どういうわけか抱きしめられていた。



「ほんと慣れるとかわいいタイプだよ。おまえって」


「やっぱいいです。やめますやめてください」


「嫌でーす、誘われたのは俺でーす。ぜったいね?約束だからね?んー…じゃあそうだな、ショッピングモール集合にしよう」



久しぶりだった。
こうして誰かに抱きしめられること。

甘えたいときだって朝だって、大好きな兄の手を払いつづけているのは私だ。


まるでそれを、私の表情から読み取ってしまったかのように。


私を抱きしめる先輩の腕は、少しだけ兄ちゃんに似せてくれている感覚がした。



「ショッピングモール…。昇降口じゃないんですか。せめて最寄り駅とか」


「俺にすら隠し事してる慶音にはさ、学校以外の場所がちょうどいいんじゃない?」


「…………」