「難しいよね。それまで他人だった人間と家族になるってのは」


「…………」



また兄ちゃんと同じようなこと言ってくるんですね。

言葉そのものもそうだし、まるでそれを経験したことがあるかのように言ってくるところ。



「けど、それでも本当の家族になれちゃうんだもん。すごいよお兄さんは」


「…先輩、兄ちゃんと麻衣子さんのことそこまで知らないのになんで言えるんですか」


「あー…、うん。たしかにそれは言えてるかも」



あの日から、私は嘘をつき続けている。

部活が終わったあとは寄り道をして、なるべく私が家にいる時間を作らないようにしていた。


家を出ていくとは決めたけれど、自分ひとりのちからじゃ実行なんかできっこない。


たとえ妹が20時を過ぎて帰宅しようが、部活だと言って私が避ければ兄ちゃんも詮索してこなくなった。



「あの、先輩。今日の放課後って…暇ですか」


「今日?そういえば空手部も部活ない日だっけ?」


「…映画とか……、いっしょに観に行ってあげても、いいですけど…」