「……なんですかこの未確認生物」
「ナマコ」
「………は?」
「って思うじゃん初見は。でもよーく見てるとぜったい愛着湧いてくるから」
5日間、修学旅行で不在だった2年生。
その5日間は私にとっては天国のはずが、どこか手持ちぶさたで、無意識にもスマートフォンをさわる頻度が多かったように思う。
振り替え休日込みで週明けの火曜日、本日。
お土産に渡されたお揃いらしいストラップ。
センスのかたまりもなかったけど、愛着とか変なことを言われるとついクスッと顔がほぐれる。
「……ねえ慶音。俺がさ、ナマコ100個買ってきたら100回その顔してくれる?」
「…しないですけど。そんないらないし」
「ちょっと戻さないで。すっごいキュンってきたんだよ今の顔。いや違うな、ギュンって心臓つかまれた感じ」
「なにキモいこと言ってんですか」
今では私の反応を怯えもしない男は、「しんらつー」と言いながらも嬉しそう。



